眼の病気を示唆する所見
- ■斜視
- 出生時や生後早期から片眼の強い視力障害があれば内斜視をきたし, また, ある程度成長した後の片眼の視力発達が高度に障害されている場合はその眼が外斜視になることがあります.
白内障, 網膜芽細胞腫, 視神経低形成, 視神経膠腫等の視神経に発生する腫瘍などで起こります.
子供さんの視線が合わない場合は, 眼科を受診してください. - ■眼振
- 眼振とは眼球が左右, あるいは上下に揺れる症状を言います. 多くは原因不明の特発性といわれるものですが, 中には乳児期における両眼の高度視力不良により眼振が見られる事があります. 水平方向, 振り子様のゆっくりとした眼振が特徴で, 原因としては両眼性先天白内障, Leber先天黒内障, 白子症, 両眼性視神経低形成(septo-optic dysplasia)などがあります.
また, 中枢神経の腫瘍により眼振が生じていることがあります.
眼科を受診してください。 - ■嫌悪反応
- 嫌悪反応とは片眼の高度視力障害がある場合に, 良い方の眼を隠すと極端に嫌がる反応です. これにより, 低年齢で視力検査が出来ない場合でも, 視力不良を疑う一助になります. また, 本やおもちゃの見る距離がとても近い場合も視力の発達がうまくいっていない場合がありますので, 眼科を受診してください.
- ■角膜(黒目)が大きい(黒めがち)
- 角膜が大きい場合は, 緑内障を疑う一助になります. 眼圧が高いと小児の場合, 眼の組織は柔軟性がありますので, 眼球自体が大きくなり(眼軸の延長)や角膜径が拡大する(牛眼)場合があります.
一方, 巨大角膜という非進行性の遺伝性疾患もまれにみられます. - ■角膜が小さい, 眼が小さい
- 角膜が小さい場合は小角膜, 強膜化角膜を疑います. 緑内障を合併することがあります.
また, 生まれつき眼球の形成が小さい, あるいは痕跡程度のものをそれぞれ小眼球, 先天的無眼球症といいます. 小眼球では網膜疾患を合併する事がありますので眼科検査が必要です. また, 緑内障を発症する事が多いため, 定期的な眼圧の検査も必要です. 無眼球症の場合, 眼の周囲の骨(眼窩骨)や瞼裂の発達が不良となるため, 生後早期からコンフォーマという器具の挿入を行い, 眼窩骨などの発達を促す治療が必要になります. - ■角膜が白い
- 先天的に角膜が白く濁っている場合, あるいは角膜がむくんで(浮腫を起こして)いる場合が考えられます.
角膜が濁る疾患として, 強膜化角膜, ペータース奇形, リーガー奇形等の角膜の先天形成異常が考えられます。緑内障を合併することがあります。
角膜がむくみを起こす場合は緑内障により眼圧が上がっている場合, あるいはむくみをとる角膜の細胞の機能が正常に働いていないことが考えられます.
また, 細菌の菌体外毒素によるアレルギー反応で角膜が部分的に濁り, 充血をおこす場合もあります.
いずれにしても眼科の受診をしてください. - ■白目の部分が青い
- 青色強膜という先天的なコラーゲンの異常によって生じているものがあります.全身疾患を合併している事がありますので眼科医, 小児科医にご相談ください.
- ■瞳が光る
- 網膜芽細胞腫という網膜から発生する腫瘍, あるいは先天白内障など瞳孔より後ろの病気が疑われます. 早急に眼科を受診してください.
さまざまな眼の病気
子どもの眼の病気についての簡単な解説です。
目次
- 1)眼瞼下垂
- 2)睫毛内反
- 3)先天鼻涙管閉塞
- 4)結膜炎
- 5)角膜炎
- 6)ペータース(Peters)異常
- 7)先天無虹彩
- 8)白子症
- 9)先天白内障
- 10)水晶体脱臼
- 11)発達緑内障(先天緑内障)
- 12)網膜芽細胞腫
- 13)第一次硝子体過形成遺残
- 14)未熟児網膜症
- 15)家族性滲出性硝子体網膜症
- 16)コーツ(Coats)病
- 17)小眼球
- 18)ぶどう膜欠損(コロボーマ)
- 19)レーベル(Leber)先天黒内障
- 20)網膜黄斑ジストロフィー
- 21)先天網膜分離症
- 22)ぶどう膜炎
- 23)視神経乳頭の先天異常
- 24)視神経炎
- 25)視神経萎縮
- 26)外傷
- 27)火傷と化学傷
- 28)眼窩腫瘍
- 29)色覚異常
- 30)先天代謝異常、ファブリー(Fabry)病
- 31)色素失調症
- 32)スティックラー(Stickler)症候群
- 33)チャージ(CHARGE)症候群
- 34)心因性視覚障害
- 35)ゆさぶられっ子症候群
- 36)遠視・乱視
- 37)弱視(機能弱視と社会弱視)
- 38)眼振
- 39)前眼部形成不全
- 40)小児の白内障
- 41)小児の緑内障
- 42)血管腫
- 43)裂孔原性網膜剥離
- 44)虐待
- 45)全身病と眼(血液・血管疾患)
- 46)全身病と眼(腎・代謝疾患)
- 47)全身病と眼(神経疾患)
- 48)全身病と眼(感染症)
- 49)薬剤による障害
<執筆協力者一覧>
野村 耕治・柳沢 翠芳(兵庫こども病院)、森 隆史(福島医大)、木内 良明・戸田 良太郎・國原 依里子・横山 知子・近間 泰一郎・田口 万蔵(広島大)、根岸 貴志(順天堂大)、林 英之・高橋 理恵(福岡大)、佐藤 美保・澤田 麻友・彦谷 明子・原田 祐子・鈴木 寛子・飯森 宏仁・古森 美和(浜松医大)、近藤 寛之・松下 五佳(産業医大)、田中 三知子(岩手医大)、植木 智志(新潟大)、松下 賢治(大阪大)、日下 俊次(近畿大)、村木 早苗(滋賀医大)、林 思音(山形大)、東 範行・仁科 幸子・中山 百合・横井 匡(国立成育医療研究センター)、野田 英一郎(都立小児総合医療センター)、野々部 典枝(名古屋大)、鈴木 茂伸(国立がん研究センター)
*なお、弱視斜視学会領域の病気についての説明はこちらをクリックしていただければ
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