さまざまな眼の病気

ゆさぶられっ子症候群

■はじめに
ゆさぶられっ子症候群(Shaken Baby Syndrome: SBS)は、乳幼児を強くゆすった場合やゆすった前後に頭部を強くぶつけさせた時に起きる衝撃によって、眼の中と、脳などの頭の内部に出血を来たす症候群です。
乳幼児虐待のひとつで、虐待の中でも致死率が高いことがわかっています。
■なぜ、起きるのでしょうか?
多くの場合、泣き止まない赤ちゃんにストレスを感じた養育者が、泣き止ませようとして執拗に強くゆさぶることで生じています。赤ちゃんの頭部は全体重の1/5を占め、首は大人に比べるとしっかり座っていないため、通常の生活でもありえる1回性の打撲を頭部に受けるのとは異なり、虐待特有の繰り返されるゆさぶりが引き起こす外力に、脳と眼はとてももろい構造です。とくに眼の中の、カメラで例えるとフィルムに相当している網膜の出血形態のひとつである出血性網膜分離は、ゆさぶりによってのみ起こる確率が非常に高いため、小児科の先生が虐待を疑った場合にゆさぶりによる虐待がなかったかどうか、眼底検査を行なって確かめることが増えてきています。
■検査方法
瞳を開く目薬を使用して、網膜をよく観察できる状態にしてから、眼底検査を行ないます。必要であれば眼底カメラで出血の様子を記録します。
■眼底検査
網膜にたくさんの出血をしますが、網膜のすぐ上や下にも出血することも珍しくはありません。重症であれば網膜が裂けて分離する出血性網膜分離があります。また受傷の程度で出血する範囲にばらつきがあります。
■その他の検査
頭部の出血や病気の程度を把握するために、頭部CTまたはMRI検査が必要です。また頭部以外で骨折などの外傷があるか、全身の骨をレントゲン撮影します。出血が止まらない体質なのかどうかを確かめるために、採血をして凝固機能の検査なども行ないます。
■予後
網膜の出血自体は自然に吸収されて消えていきますが、網膜に残ってしまった変化はその後治らないことが多いです。成長して視力が十分に出ない弱視になることもありますし、手の動きしかわからないほど重い視力障害が残ることも決して稀ではありません。また脳へのダメージが強いほど、その後の身体発達は悪くなります。
■小児眼科医の役割
虐待は第三者が介入しない限り止める事ができません。繰り返されている虐待を眼底検査によって的確に見つけ出し、小児科医や児童相談所と連携して、子どもを安全な環境へ保護する役割を担います。

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