さまざまな眼の病気

先天代謝異常、ファブリー(Fabry)病

■はじめに
先天代謝異常は、物質を分解する酵素が十分働かなかったり欠損したりするため、体内で余分な物質がたまる、あるいは必要な物質が不足してしまい、正常な体の発達を障害する病気です。その症状や症状の出る時期は病気によって異なりますが、全身症状の一つとして眼にも現れることもあります。先天代謝異常の主なものとして、生後4-6日に行われる新生児マススクリーニングで調べられる疾患とそれらよりも発症時期がやや遅れますが頻度の比較的高いFabry 病があります。
■ファブリー(Fabry)病
α-galactosidase A 酵素活性が欠損したり低下したりする病気です。α-galactosidase A 酵素は、細胞内のリソソームという小器官でスフィンゴ糖脂質を分解する働きをしています。この酵素が働かないことでスフィンゴ糖脂質が細胞内に蓄積してしまいます。眼では、角膜に渦巻き状の混濁を引き起こします。眼以外では、心臓、腎臓、血管、皮膚などに障害を引き起こします。
この遺伝子は、性別を決める染色体であるX 染色体の上にあります。女性は、このX 染色体を2本持っていますが、男性は1本しか持っていませんので男性で発症しやすいです。典型的ファブリー病の男性は、幼少時より全身症状(手足の末端の痛み、皮膚に赤暗紫色の皮疹など)が出現します。角膜の混濁は、90%以上の患者さんで観察されますが、小児科の先生から紹介されて眼科を受診した際見つかることが多く、視力障害などの自覚症状はあまりありません。
治療は、障害されている臓器ごとに病期に合わせての治療が行われています。また、臓器に不可逆的な変化を来す前には、酵素を補う治療法も行われています。
■その他の主な先天代謝異常
新生児マススクリーニングで検査される代謝異常疾患における眼症状は、フェニルケトン尿症で白子症様症状(眼振、まぶしさ、視力障害)、ホモシスチン尿症で白内障や水晶体偏位などの水晶体の異常、ガラクトース血症で白内障、メープルシロップ尿症で視神経萎縮などが知られています。治療法は、全身的治療として不足した酵素を補ったり不要な物質が体内に蓄積しにくい治療食にしたりします。このような全身的治療により眼症状の進行が予防できたり、白内障の可逆性変化が認められたりすることもありますが、進行した場合は眼局所の治療が必要となります。
■治療と管理
全身の症状の一つとして眼にも病気をきたすものですので、小児科での全身的な診察・管理が大切になります。その上で、眼への影響がないかどうか、定期的に眼科検査を受ける必要があります。

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