さまざまな眼の病気

先天無虹彩

■はじめに
先天無虹彩とは、先天的な素因によって生まれつき虹彩(茶目)が根元を残して欠損する病気です。5~10万人に1人の頻度で起こるまれな疾患で、男子にやや多く、60~90%は両眼性です。全体の2/3は常染色体優性遺伝で、1/3は散発性に発症します。PAX6という眼の組織形成にかかわる遺伝子の変異が関係しているため、無虹彩の他にも種々の合併症が起こることがあります。散発性の場合は約20~30%に腎臓の腫瘍や泌尿器生殖器異常、精神発達遅滞を伴います。
■症状
光の量を調節する虹彩がありませんので、乳幼児期からまぶしがります。目が揺れたり(眼振)、黒目が白く濁ったり(角膜混濁)します。約8割が生後1年以内に診断されていますが、早期発見・早期治療が大切です。
虹彩の異常が疑われたら、まず眼科を受診させてください。遺伝性の疾患ですので、ご両親やご兄弟に先天無虹彩の方がいらっしゃる場合には、生まれてすぐに一度眼科を受診なさった方がよいでしょう。角膜自体、あるいはその奥に白い濁りがあることに気づいたら、手術が必要になる場合があるため、早急に眼科を受診してください。
■合併症
・黄斑低形成:合併症のうち視力に最も影響します。目の奥にある光を感じとる網膜のうち、物の形を細かく見るために大切な黄斑と呼ばれる部分の形成が悪い状態で、眼振を生じます。根本的な治療法は現在のところありません。
・緑内障:先天無虹彩の50~75%に合併します。隅角という眼の中の水の通り道の形成が悪く、塞がってしまうことで眼圧が上昇し、視神経が障害され視野が狭くなっていく病気です。多くの場合、手術治療を必要とします。
・白内障:先天無虹彩の80%に合併すると言われています。白内障は水晶体というカメラで例えるとレンズの役割をしている部分が濁ってくる病気です。高度の混濁がある場合には、手術治療が必要です。
・その他:血管侵入による角膜混濁、視神経低形成、斜視、高度の屈折異常など
■治療・管理
羞明(まぶしがり)を軽減するために遮光眼鏡や虹彩付きコンタクトレンズを使うことがあります。屈折異常に対して適切な眼鏡を装用し、よりよい視機能の発育をうながします。緑内障などを合併している場合には、手術や点眼薬による治療が必要となります。生直後には異常がなくても、成長とともに合併症が起こって視力が低下することがありますので、定期的な眼科受診が必要です。腎臓の腫瘍の有無を調べるために、泌尿器科や小児外科の定期受診も必要です。

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