発達緑内障(先天緑内障)
- ■はじめに
- 発達緑内障とは、隅角という部分の発育異常により、眼圧が上昇し、視神経が障害される病気です。わが国での発症頻度は、約3万人に1人と報告されています。発達緑内障は、早発型発達緑内障(生後1歳までに約80%が発症する、生まれた時に起こっている場合は先天緑内障とも呼ばれる)、遅発型発達緑内障(隅角異常の程度が軽く、主に10~20歳代で発症する)、他の先天異常(無虹彩症、スタージ・ウェーバー症候群、ペータース異常など)を伴う発達緑内障、の3つに分類されます。
- ■症状
- 早発型発達緑内障の場合は、高い眼圧によって眼球が拡大するために、流涙(涙が多い)、羞明(光を極端にまぶしがる)、眼瞼けいれん(まぶたがピクピク動く)、角膜混濁(黒目が白くにごる)、角膜径拡大(黒目がかなり大きく見える)といった症状が現れます。発達緑内障は、できるだけ早く発見し治療を開始する必要がありますので、このような症状がみられる際は、すぐに眼科を受診するようにしてください。一方、遅発型発達緑内障の場合は、上のような症状が見られることは少なく、発見が遅れることが多いです。他の先天異常を伴う発達緑内障は、全身的な先天異常を伴うことがあります。
- ■原因
- 発達緑内障の多くは、遺伝性はなく、原因ははっきりわかっていませんが、CYP1B1という遺伝子に変異をみとめるケースが報告されています。
- ■診断
- 発達緑内障の診断には、眼圧検査、隅角検査、眼底検査などが必要ですが、じっとして検査を受けることができないような小さい子供さんの場合には、全身麻酔をかけたり、催眠剤を用いて、正確な検査を行う必要があります。
- ■治療・管理
- 早発型発達緑内障は、薬物治療の効果が低いため、早急に手術を行う必要があります。一般に、線維柱帯切開術、もしくは隅角切開術という手術を行います。1回の手術で眼圧が下がらない場合は、複数回の手術が必要になり、またその後も生涯にわたる経過観察が必要です。また、眼圧が下がった後も、角膜混濁などの機能的な障害が残っていることが多く、視機能の発達が妨げられるため、眼鏡の装用やアイパッチの使用など、弱視に対する治療を継続して行う必要があります。
遅発型発達緑内障は、一般に薬物治療から開始し、薬物では眼圧が下がらない場合に、手術を行います。
喘息や心臓の病気がある場合、治療に使用できない薬物がありますので、そのような病気の既往をお持ちの場合は、あらかじめ眼科医に伝えてください。
他の先天異常を伴う発達緑内障では、発症した時期や先天異常の種類に応じて、手術もしくは薬物治療を行います。
発達緑内障は、小児における重篤な視覚障害の原因となる疾患ですので、できるだけ早期に発見し、迅速な診断・治療を受け、生涯にわたる定期検査と、視機能の発達を考えた弱視治療が必要です。