小眼球
- ■はじめに
- 小眼球(症)とは、生まれつき眼球の大きさが小さい病気で、発生頻度は約10,000人に1人といわれています。
胎内で眼球の形がつくられる早い時期に、眼球全体の発達が障害されて小眼球となりますが、しばしば角膜、水晶体、網膜・硝子体などの発生異常を合併します。真性小眼球とは、眼球の大きさが小さいものの構造はほぼ正常なタイプです。小眼球症には、眼の組織がほとんどない無眼球、極小眼球、先天性嚢胞眼(のうほうがん)という重度のものから軽度の小眼球までさまざまな程度があります。
- ■原因・診断
- 全身の先天異常・症候群に伴って起こるもの、原因遺伝子(SOX2, PAX6, RX, CHX10)など初期発生に関与する遺伝子)が発見されているものもありますが、まだ原因不明のものも多い病気です。子宮内の感染(風疹など)、薬物、アルコールなど、妊娠初期の環境要因が原因となることもあります。小眼球症は、眼球の長さ(眼軸長)、角膜の大きさ(角膜径)、左右眼の大きさの差をもとに診断されます。
- ■視力障害・併発症
- 視力障害の程度はさまざまですが、重度の小眼球・合併異常および併発症をきたした例では重篤な視力障害を起こします。小眼球の全国調査(2009 年)によると、視力は光覚~0.02未満:34%、0.02~0.1未満:11%、0.1~0.3未満:9%、0.3以上:16%、測定不能:30%(うち視反応不良:24%、視反応良好:6%)でした。全身の異常の合併頻度は31%、併発症の頻度は白内障34%、緑内障13%、網膜剥離7%でした。
- ■治療・管理
- 小眼球症は強度の屈折異常(遠視・乱視)を合併しますので、両眼性の小眼球の場合には、乳幼児期から眼鏡を常に装用して、保有している視力を伸ばす訓練が必要です。また白内障、緑内障などの合併症を早期に診断して、手術と弱視治療を受けることが大切です。しかし片眼性の場合には、手術や訓練をしても効果が上がりませんので治療対象とならないことが多いです。片眼性の極小眼球、無眼球の場合は、眼窩(眼球の周囲組織)や顔面骨の発育が遅れて外見が問題となります。生後早い時期に拡張器の装着を始め、コンタクト義眼を装着するようになると外見を整えることができます。
小眼球症では小児期に限らず、成人以降も比較的若年のうちに白内障、緑内障、網膜剥離などの併発症が起こることがあります。これらの併発症に対する手術は正常な大きさの眼に比べて難しいですが、手遅れにならないように、眼科へ定期的に受診してください。