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全身病と眼(神経疾患)

■はじめに
神経疾患とは脳・脊髄・末梢神経などに障害を引き起こす病気の総称です。小児の場合は生まれた時から障がいがある場合と、生まれたときには問題が無いけれど成長に伴って徐々に障がいが進行するものがあります。神経疾患はたくさんの種類がありますが、目に合併症を伴う疾患には、視力や視野など見え方に影響するものがあります。
■先天的な全身神経疾患
・アイカルディ(Aicardi)症候群:神経の発生異常により起こり、脳梁欠損やけいれんを認めます。眼の障がいとしては網脈絡膜コロボーマ、視神経乳頭異形成(低形成)、小眼球を認めます。10万人に1人の割合で発症し、遺伝性はなくほぼ女児に発症します。
・アーノルド-キアリ(Arnold-Chiari)奇形:小脳・延髄・橋の発生異常により起こり、小脳症状、脳神経症状、筋力低下、温痛覚障がいを生じます。眼の障がいとして、ホルネル(Horner)症候群(眼瞼下垂、縮瞳、散瞳不良などをきたす)、知覚低下による角膜障がい、上下方向の眼振を認めます。0.1万人に1人の割合で発症し、小児~成人での発症を認めます。
・ダンディー-ウォーカー(Dandy-Walker)症候群:小脳中部の形成不全により、水頭症、脳梁欠損、精神発達遅滞を生じます。また後頭部が突出した独特な頭形がみられます。
眼の障がいとしては落陽現象(両眼の下方への位置ずれ)が認められます。2.5~3.5万人に1人の割合で発症し、新生児~乳児期での発症を認めます。遺伝性はありません。
・神経線維腫症Ⅰ型(von Recklinghausen病):中胚葉組織の増殖と皮膚神経組織の増殖と腫瘍化が原因で起こります。皮膚に褐色のカフェオレ斑、神経のいろいろな部位に神経線維腫、また骨異常を引き起こします。常染色体優性遺伝を示す疾患であり、3000人に1人の割合で病気になりますが、家族内でも症状の出方が様々です。皮膚のカフェオレ斑は出生時より体幹を中心にみられ、思春期以降に神経線維腫が全身の皮膚、末梢神経に多発し、脳内に発症するとてんかん、片麻痺、精神発達遅滞などを伴います。眼の障がいとしては、虹彩結節があり頻度が高いです。約15%に視神経膠腫を合併し、時として視神経が圧迫されて視力が低下するので、放射線治療、化学療法、外科的切除を検討しますが、視機能が失われる可能性があります。また緑内障を発症して治療が必要になることもあります。
・結節性硬化症(Bourneville-Pringle病); 脳内の腫瘍が関連し、精神発達遅滞、てんかん、顔面の血管線維腫の3つを特徴とする病気です。常染色体優性遺伝ですが、2/3は突然変異と言われています。眼の障がいとして、約50%に網膜や視神経乳頭部の白色隆起(星状細胞性過誤腫)を小児期から発症します。そのうち1/3は両眼性であり、多発性ですが、視力に重要な網膜黄斑部に発生することが少ないので視力が低下は、めったにみられません。しかし、まれに過誤腫に異常血管が侵入していると、血管が破れて硝子体出血をきたすことがあり、視力低下を訴えることがあります。白色隆起の形状より悪性の網膜芽細胞腫、胎内感染など他の病気との鑑別が必要です。
・透明中隔-視神経異形成:お母さんのおなかにいるときの発生過程において、視交叉の形成不全が原因で起こると考えられます。視神経低形成、透明中隔欠損、下垂体機能不全の3つを特徴とする病気です。眼の障がいとしては、振り子様眼振やシーソー眼振、片眼または両眼の視神経低形成を認めます。比較的視力がよい場合は両耳側半盲を認めます。眼鏡等での屈折矯正や眼振に対する外眼筋手術、斜視があれば斜視手術を検討します。頭部CTまたはMRIで透明中隔欠損を認めれば診断です。重症の場合は下垂体機能不全や視床下部欠損による尿崩症や低身長を合併しますが、早期診断し、必要な症例には3歳までにホルモン補充療法を開始すると後遺症を残さないとされます。
■後天的な全身神経疾患
・(眼筋型)重症筋無力症:神経からの信号が筋肉に伝わる部分に異常を生じるために、筋肉の力が落ちる病気です。大人にも発症しますが、子供に発病するときにはまぶたが下がる眼瞼下垂で発症する場合が多く、それに眼球を動かす眼筋の異常も伴って斜視になることもあります。神経の麻痺と違って瞳孔が開いたりせず、また筋肉をうごかすと力が落ち、休ませると回復する特徴があり、夕方になると症状が悪化したりします。診断がつけば投薬で治療されます。胸腺腫という腫瘍を合併することがあり,そのときは手術が必要になります。
・急性播種性脳脊髄炎(ADEM): 原因不明で全身の様々な神経に炎症が起こり、多発する病気を脱髄性疾患と言います。そのうち子供によく見られるのが急性播種性脳脊髄炎(ADEM)です。急に立てなくなったり、手の動きが悪くなったり、歩行が困難になったりします。目の症状では視神経の炎症がよく見られ、両目ないし片目の視力が低下します。高度な場合は光がわかる程度にまで視力が低下する場合もあります。時には眼球を動かす神経が麻痺して斜視になることもあります。診断がつけば副腎皮質ステロイド剤などで治療されますし、自然に回復することもありますが、なかには完全に回復しないことや、いったん回復しても再燃することもあります。
・脳(頭蓋内)の病気に伴う目の障がい:頭蓋骨のなかに収まっている脳に損傷が生じると全身に様々な異常を生じますが、それにともなって目に異常をきたします。原因になる脳の異常には脳の腫瘍や、転倒などで頭を打撲してできた外傷や、脳出血や脳の血管閉塞などがあります。主な異常には次のようなものがあります。
・視野の障がい:視野の中心から半分のみが見えにくくなるものを半盲といい、左右どちらかが半盲になっているのを同名半盲、両目の耳側が見えないのを両耳側半盲といいます。
・斜視:外転神経という神経が麻痺すると片側あるいは両側の目が内側によります。動眼神経が麻痺すると目は外側にずれ、それ以外にも目が上下にずれたり瞳孔が開いたり眼瞼が下がったりします。滑車神経の麻痺では目が上下にずれたり、首をかしげてものを見るようになったりします。そのほかにもいろいろな部位の障がいで斜視が生じることがあります。
・うっ血乳頭:視神経が紅潮(発赤)して腫れ(腫脹)た状態をいい、いろいろな病気で脳の圧が高くなると、おこることがあります。外転神経の麻痺を伴う場合もあります。
■治療と管理
先天的な神経、遺伝子の異常には根本的な治療法はありません。それぞれの症状に対して治療していく対処療法になります。定期的な視力検査や眼底検査などでお子さんの状態を確認し、他の合併症が起こらないか確認していく必要があります。その上で必要であれば眼鏡処方や手術なども検討していく必要があります。後天的な異常にはそれぞれの原因ごとに治療を行います。

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