さまざまな眼の病気

結膜炎

1. 感染性結膜炎
1-1 細菌性結膜炎
■はじめに
感染性の結膜炎は小児と高齢者に多い特徴があります。年齢によって原因菌がことなります。新生児ではクラミジア、淋菌、乳幼児はインフルエンザ菌、学童期では肺炎球菌、ブドウ球菌などが原因になります。
■眼症状
症状は、充血と黄色っぽい目やにが出ます。乳幼児では風邪をひいて鼻詰まりがあるときに生じます。感染が生じやすい月齢があります。生後6 カ月までは母体からの免疫で感染が防御される一方で、生後6ヶ月から2歳までの時期は母乳や母体からの免疫が徐々になくなり,自己の免疫が確立されていく移行時期であることから感染に弱ことが関係しています。
■治療
顕微鏡検査や目やにの培養検査などを行い、原因となる細菌を特定します。細菌性結膜炎は、抗生物質の点眼薬を使用します。多くは予後良好で1 週間以内に治癒することがほとんどです。長引く時、再発するときは、さかさまつげ(睫毛内反)や涙嚢炎などの疾患の存在を疑います。
1-2 ウイルス性結膜炎
■はじめに
ウイルスによる結膜炎には、アデノウイルスが原因になっている流行性角結膜炎や咽頭結膜熱、エンテロウイルスが原因になっている急性出血性結膜炎などがあります。いわゆる「はやり目」と呼ばれるものは、流行性角結膜炎です。潜伏期(感染してから症状が出現するまでの期間)は、アデノウイルスでは約1 週間、エンテロウイルスでは約1日です。流行性結膜炎と咽頭結膜熱は両者ともアデノウイルスが原因ですが、ウイルスのタイプが違うために症状に差が出ます。
■眼症状
急激に起こる充血、多量の目やに、流涙、および目を動かすと疼痛を感じることが特徴的です。かゆみはほとんどありません。初期には片眼性で数日中に両眼性になります。咽頭結膜熱はのどの痛み、発熱、下痢などの全身症状を伴いやすい特徴があります。
通常、発症してから約1 週間の間に病状のピークがあり、その後徐々に改善してきます。しかしながら、炎症が強い場合は黒目(角膜)の表面に小さな濁りが残ることがあります。
■管理・治療
ウイルス性結膜炎に対しては、今のところ特効薬はありません。感染したウイルスに対する抗体が体内で作られるのを待つしかありません。通常は炎症を抑え、細菌による二次感染を防止するための目薬を使用します。とくに乳幼児は角膜炎が重症化することがあり注意が必要です。症状が改善しても、角膜に濁りが残ると弱視を起こすおそれがありますので、きちんと治癒しているかどうか眼科でチェックを受けることが大切です。
ウイルス性結膜炎は、感染力が非常に強いために、幼稚園や学校を休ませる必要があります。学校伝染病に指定されており、医師が周囲への感染力がなくなったと判断するまで、登校を禁止することになっています。また、家族全員がかかってしまう事もあります。涙や眼脂を介して感染が広がるため、涙を拭いたティッシュは個別に捨てる、タオルも別にする、むやみにいろんなものを触らないようにします。通常の石鹸や消毒薬は効果がありません。加熱やアルコール消毒が有効で、ドアの取手など多くの人が触れる場所は、アルコールで消毒することが必要です。
2. 非感染性結膜炎
2-1 アレルギー性結膜炎
■はじめに
アレルギー反応の原因をアレルゲンといいます。そのアレルゲンにより目のかゆみが生じる病気をアレルギー性結膜炎と呼びます。アレルゲンが体内に侵入すると、「好酸球」という細胞が過剰に反応して、「ヒスタミン」などの化学伝達物質が血液中に増加します。それがアレルギーの原因です。季節性アレルギー性結膜炎と通年性アレルギー性結膜炎に分かれます。
季節性アレルギー結膜炎は、主として花粉がアレルゲンになります。地域によって花粉の飛ぶ時期にちがいがありますが、一般的には春はスギ、ヒノキ、初夏はカモガヤなどのイネ科の樹木、秋はブタクサやヨモギなどが代表です。通年性アレルギー結膜炎は、ダニ、ハウスダスト(家のなかのほこりのことで、ダニやカビ、動物のフケや蚊など)が原因になります。最近の住まいは気密性が高く、湿度が高くなり、結果としてダニが繁殖しやすい状態になっていますので注意が必要です。
■眼症状
症状は、目のかゆみです。目をこすっていると次第に痛みが加わります。そのまま放っておくと目が充血して、まぶたが腫れてきます。さらに症状が悪化すると、結膜に偽膜(ぎまく)とよばれるゼリー状の目やにが出てきます。
■治療
抗アレルギー作用をもつ目薬を使用します。抗アレルギー点眼薬にはヒスタミンH1点眼薬とメディエーター遊離抑制点眼薬の2種類があります。前者は、かゆみを引き起こすヒスタミンの作用を直接抑えるので、かゆみの強いときに使用します。後者は、ヒスタミンなど を増やさないようにする作用はありますが、効果が現れるまで2週間くらいかかるため、症状が現れる前から使用する必要があります。抗アレルギー点眼薬は 比較的副作用の少ない薬ですが、重症の場合、副腎皮質ホルモン(ステロイド)点眼薬の使用や抗アレルギー薬の内服をします。
2-2 春季カタル
■はじめに
春季カタルはアレルギー性結膜炎の慢性重症型です。10 歳くらいまでの男児に多く、90%以上がダニ過敏症です。
■眼症状
軽症例ではかゆみが主体です。炎症が強くなるにつれてめやにが増加します。上まぶたの裏側に、石垣をならべたようなぶつぶつがでる、黒目(角膜)白目(結膜)の境が赤く腫れるなどの所見があります。瞼にこすられて黒目の皮がはがれると涙が多くなり、痛みやまぶしさのために目が開けられなくなります。
■治療
アレルギーのもとになる原因の除去と薬物治療が主体になります。屋内のダニの防除が重要で、丹念な清掃および、絨毯、ソファなど埃がたまりやすく清掃しにくい家具、調度を除去します。近年、免疫抑制薬の点眼が使えるようになり、薬物治療が進歩しました。抗アレルギー点眼薬、ステロイド点眼薬を上手に組み合わせる必要があります。また、ステロイドの内服や、上まぶたの裏の隆起を切り取る手術をすることがあります。

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