ロービジョンケアにおける医療と教育の連携
(ロクシタン支援による小児眼科学会研究事業)

子どものロービジョンについて

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ロービジョンケアにおける医療と教育の連携(ロクシタン支援による小児眼科学会研究事業)

①医療と教育の連携について

小児のロービジョンケアの特徴と支援の課題として以下の点が挙げられます。
1)先天性あるいは出生直後に発症する疾患に起因することが多い
 →早期発見・治療、乳幼児期からロービジョンケアを必要とすることがある
2)原因疾患は成人と異なり多彩で、個人差が大きい
 →専門機関における精密検査
3)重複障害の比率が高い
 →小児科、耳鼻科、整形外科など他科との連携
4)視機能評価のための自覚的検査が乳幼児期には困難である
 →専門機関における視覚及び重複障害の他覚的評価
5)年齢・発達の段階に応じてニーズが変化する
 →継続したロービジョンケア、ニーズに応じた支援
6)患児に対するケア
 →保有視機能の発達と活用を促すため眼鏡や補助具を導入、視環境の整備
7)保護者に対するケア
 →疾患と障害を理解できるように説明、医療・福祉情報の提供、日常生活指導、養育相談
8)療育相談・教育相談のニーズが多い
 →視覚特別支援学校・学級との連携
9)成人とは異なる社会福祉制度の活用
 →身体障害者手帳、小児慢性特定疾患、特別児童扶養手当など
10)就園・就学(社会参加)に向けた支援、就学後の継続したケア
 →医療機関と教育機関の連携

小児のロービジョンケアには、第一に医療機関と教育機関の連携が不可欠です。
医療機関における院内相談、特別支援学校・学級への連携、教育機関の抱える問題、各地域における連携の在り方について、下記の研究を進め、全国へ発信していきます。
1)2021年度は、①乳幼児、②就学前、2022年度は③学童を対象として、医療機関と教育機関(視覚特別支援学校・学級)の連携について実態調査を行います。
2)本学会HPにロービジョンに関するセクションを作り、連携に役立つ情報を掲載します。
3)医療機関と教育機関の関係者による合同web勉強会を開催して内容を発信します。
4)2022年、2023年日本小児眼科学会総会においてセミナーを開催し、研究成果を公表します。

②教育機関のリンク

幼小児期に視覚障害となった児童に対しては、早期の視覚リハビリテーションが日常生活の質を向上させる上で有用であると報告されています。しかし、視覚リハビリテーションを行う施設の情報が、必ずしも十分ではありません。また就学にあたって、普通学級に行くか、視覚特別支援学級(弱視学級)に通級するか、視覚特別支援学校(盲学校)に行くかといった問題も、重要ですが、地域によっては盲学校が県に1つしかなく、遠距離の場合どうするかという情報も得られにくい場合があります。このような情報提供を含め、視覚障害児の教育の相談窓口として、地域の盲学校が重要な役割を担っているので、ここに、全国の盲学校、視覚支援学校のホームページのリストを掲載します(リスト1)。また盲学校以外でも視覚障害の乳幼児の相談施設についても掲載します(リスト2)。なお、視覚障害児の家族の会などの情報は、盲学校からのリンクで得られる場合があることを付記します。

また、ロービジョンについてのその他の情報については、下記のリンクを参照してください。
https://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/ophthal/www/lowvision/

③実際の取り組み例

― 視覚支援学校(盲学校)でのロービジョン勉強会を通しての実際の取り組み―

福島県におけるロービジョン児に対する医療と教育の連携を紹介します。
福島県には、視覚に障害のある小児の眼疾患や就学、生活などの問題点を様々な立場の関係者が連携し情報を共有、それぞれの児のよりよい成長を支援するための勉強会があります。
その中で、小児に関して、就学前の幼児の事例については、医療施設から症例を提示して、視覚支援学校地域支援センター(目の相談室のびのび)の先生方に繋ぎ、今後を相談します。就学後の学童については、主に、視覚支援学校から学童の眼疾患についての相談や質問があり、眼科医や視能訓練士などから、疾患の全般的説明や視機能の予測などの解説がなされます。この勉強会を通して、教育担当者の眼疾患や視機能への理解が深まる一方、医療関係者の教育現場でのロービジョン児の状況の把握が可能となります。さらに、福祉関係者、機器取扱店などからのアドバイスなどもあり、児童生徒の生活あるいは学習上の視的環境の向上に役立っています。

名称:福島ロービジョン勉強会
会場:福島県視覚支援学校内
開催頻度:3ヶ月に1回程度
日時:金曜日午後7時~
参加者:ロービジョンやロービジョン者(児)への支援に関心があれば資格を問わない
    眼科医、視能訓練士、視覚支援学校教員、
    視覚障害生活訓練等指導者(歩行訓練士)、
    点字図書館および福島県視覚障がい者生活支援センター職員
    ボランティア団体(にじの会)、視覚障害者用機器取扱店など
内容:
 1)ミニ講義(持ち回り)
 ・眼疾患(視機能障害を引き起こす可能性のあるものはもちろん、頻度の高いものを
  取り上げて)の講義や、活動報告、情報提供、お知らせなど
 ・最近経験あるいは知り得た情報や、困ったこと、相談したいことなど
  プレゼンテーションの方法は問わない(スライド呈示、紙面、口頭など)
  これまでのミニ講義の主な内容
  ・再生医療 ・近視の眼軸長 ・心因性視力障害 ・クラッチ眼鏡 ・固視訓練
 ・視覚障害者に支給される県内各市のタクシー券等
 ・白杖の申請方法、自己負担など ・S眼科におけるロービジョン外来の現状
 ・最新の拡大読書器の紹介
 ・ロービジョンにこれから介入が必要な幼児と学童の症例呈示
 ・普通学級に在籍し盲学校の先生に介入いただいている症例の視機能
 ・視覚障害者手帳(2級)を持つ大学生の今後の就活について相談
 ・福島県における視覚障害者用付加装置付音響信号機の稼働状況調査
 2)事例報告、相談
 ・視覚支援学校在校生や未就学児対象の、のびのび教室の乳幼児について担当教員
  からの現状報告や、眼疾患についての質問
  これに対して、眼科学的解説や、児の視機能に関する情報の共有
  これまで、未熟児網膜症、網膜色素変性症、緑内障などが取り上げられた。
 ・医療施設より、就学前、就学後の事例の提示による相談と情報の共有
  ほぼ毎回あり
  これに対して、支援学校、のびのび教室の教員からのアドバイスあり

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